かわせみ

〜用水の宝石〜


神田川にかわせみが住んでいると聞いたのは、ずいぶん前のことだ。中学生の頃だったろう。そして、去年半ば頃から、近所の用水でかわせみを見かけるようになった。

初めて遭遇したときは、やはりひどく驚愕した。用水の上を飛ぶ、あくまでも美しい青緑色の鳥。その姿をちらりと見た瞬間、あ、かわせみだ、と思った。生き物は皆それぞれに美しいし、色鮮やかなものも決して少なくはないが、僕の家の近所で見かける機会はそうそうなかった。ああ、近所の用水にもかわせみがやってきたのかと、純粋に感動した。そして、神田川のことを思い出したのだ。

神田川も近所の用水も、コンクリートでU字型に固められている。壁面には直径10cm弱の穴があり、どうやらそこに住んでいるらしい。

何とかしてじっくり見ようと思い、ある日、用水をずっと眺めてみた。そして、いろいろなことを考えた。用水で、何を食べてるのかな。1羽だけじゃ、寂しくないかな。他にもいるのかな。どこから来たのかな。すみかは、家族は、友達は。

つらつらと考えて、急に悲しくなった。かわせみがここに来たということは、裏返せば上流の環境が劣悪になったということだろう。埼玉県南東部の、汚い用水まで、どれほどの距離を飛んできたのか。地図で見ると、西部の丘陵までは40kmほど。その距離を飛ぶ間、どんなことを思っていたろう。

宝石には、やはり美しい背景が似合うはず。今となっては、西部の丘陵だってどれほどきれいか疑わしいが、そのうち機会があったらぜひ行ってみたい。